平成28年度 都倫研総会ならびに第一回研究例会(終了)

1.日 時  平成28年6月25日(土)13:20〜17:00(13:00受付開始)

2.会 場  東京大学教育学部附属中等教育学校
            〒164-8654 東京都中野区南台1丁目15番1号
            交通 JR新宿駅西口交番上から京王バス永福町行または佼成会聖堂行
            「東大附属」または「南台一丁目」(新宿方面からのみ)下車、徒歩1分 ほか
             (詳細はhttp://www.hs.p.u-tokyo.ac.jp/access/)

3.内 容 (1) 特別講演「現代における良心の自由の問題」(13:20-14:40)
              調布サレジオ神学院チマッティ資料館 館長 ガエタノ・コンプリ先生
        (2) 平成28年度総会(14:50-15:20)
        (3) 学術講演「倫理を基礎づける――中国哲学から」(15:30-17:00)
              東京大学東洋文化研究所 教授 中島隆博 先生

◎特別講演について◎
 ガエタノ・コンプリ先生(1930年生)はサレジオ会士として1955年に来日、1958年に司祭として叙階され、また教育者としても広く活躍されてきました。サレジオ短期大学、調布サレジオ神学院哲学・神学講師、中津ドン・ボスコ学園中学校長・養護施設長、育英工業高等専門学校倫理・哲学教授、目黒サレジオ中学校校長、サレジオ高等学校校長を歴任されました。1987年よりドン・ボスコ教育研究所所長、1992年より日向学院理事長、1996年にカトリック下井草教会の主任司祭を勤め、2000年、調布サレジオ神学院のチマッティ資料館の館長に着任、現在に至ります。聖骸布の研究者としても知られています。
 キリスト教や聖書の入門書の他、『人間を考える−人間としての在り方・生き方』『新時代に人間を考える −指導要領への提言』をはじめとする多数の倫理教育に関する著書があり、都倫研・全倫研でも多くの教員がその謦咳に接し、学んでまいりました。
 このたびは、時代の転機にあって、学習指導要領にも大きな変化が予想される中、長年倫理教育に取り組んでこられた先生のお話しをうかがいます。(講演は日本語です)
◆講演講師プロフィール◆
中島隆博(なかじまたかひろ) 東京大学法学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京大学文学部助手、立命館大学専任講師・助教授、東京大学大学院総合文化研究科准教授、東洋文化研究所准教授を経て、現在同研究所教授(中国思想・宗教)。2009年から「現代社会」教科書の改訂・執筆に関わる。著書に、『残響の中国哲学 言語と政治』(東京大学出版会)、『ヒューマニティーズ 哲学』(岩波書店)、『荘子 鶏となって時を告げよ』(岩波書店)、『共生のプラクシス 国家と宗教』(東京大学出版会)、『悪の哲学 中国哲学の想像力』(筑摩書房)、『コスモロギア 天・化・時』(法政大学出版局)など。2002年からUTCP(東京大学 共生のための国際哲学研究センター)委員。
◆講演内容◆
 「倫理を基礎づける」という問いが近代において登場した背景として、宗教の後退が指摘される。では、宗教的な超越無しに、倫理をどう基礎づけるのか。その際、自然(性)が注目されていったのだが、自然(性)から直接に倫理が導き出されるわけではない。そこには、何らかの曲折が必要である。
 本講演では、まず中国古代の性に関する倫理的な議論を検討し、自然(性)から倫理を導く際に、前者の変容さらには人間の介入的行為が必要であったことの意味を考える。その性論は、仏教への批判を経て、宋代以降に再び脚光を浴びるようになるが(朱子学や陽明学)、理という仕掛けが不可欠であった。しかし、理という強い原理を維持することはできないのではないか。この問いを提出した清代においては、再び、古代的な弱い規範である礼が倫理として再定義されていく。それは、同時代のヨーロッパの議論とも交差するものであった。


平成28年度 夏季研究協議会(振替実施)

1 日時:平成28年9月25日(日) 13:30〜17:30

2 場所:東京都立小山台高等学校 会議室
     (交通:東急目黒線武蔵小山駅前すぐ)

3.内 容
(1)13:30〜15:10 読書会:『荘子』
                    レポーター  東京都立小山台高校 並木信人 先生
      推奨テキスト:福永光司訳『荘子内篇』(講談社学術文庫)
      レポーターからの案内文はこちら

(2)15:20〜17:30 実践交流会
           プリント持ち寄り・授業実践報告


平成28年度 夏季研究協議会(台風のため延期)

1 日時:平成28年8月22日(月) 13:30〜17:30


平成28年度 第二回研究例会(終了)

1 日時:平成28年10月11日(火)午後1時50分〜午後5時20分

2 場所:東京都立桜修館中等教育学校
            〒152-0023 東京都目黒区八雲1−1−2
            交通 東急東横線「都立大学」下車徒歩10分ほか →詳細はこちら

3 内容:
            13:50 受付開始
            14:20〜15:10 公開授業「ヘーゲル 人倫の思想」(中等5年生・倫理)
                    東京都立桜修館中等教育学校教諭 久世 哲也 先生
            15:10〜15:25 休憩
            15:25〜15:40 公開授業についての研究協議
            15:40〜17:10 講演「ヘーゲルと西洋現代」  哲学者  長谷川 宏 先生
            17:10〜17:20 諸連絡
            17:20 閉会

■公開授業の概要■(久世哲也先生より)
 ヘーゲルの弁証法を身近な事例で理解させるとともに、それを踏まえて人倫の思想を考察させます。
 具体的には、ルール・校則・法律などの表現が多様な意見が統合された結果のものであることを理解させ、それらをよりよくするために、更にどのような立場の人を慮るべきかを軸に、改善案を考えさせます。更に法と道徳が止揚されて人倫が形成されることを説明し、自分たちのもつ「社会はこうあるべきだ」という道徳観が、法や社会をよりよくすることにつながることに気付かせ、主体的に法やルールを策定し利用する意識を育みます。
■講演講師プロフィール■
長谷川 宏(はせがわ ひろし)1940年、島根県出雲市に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。大学闘争に参加後アカデミズムを離れ、学習塾で小中学生、OB・OG生相手に学習指導、夏期合宿、演劇祭、読書会をおこないつつ、哲学の研究を続ける。著書に、『ヘーゲルの歴史意識』『同時代人サルトル』『ことばへの道』(以上、講談社現代新書)『哲学塾/生活を哲学する』(岩波書店)『日本精神史』(講談社)など。訳書に、ヘーゲル『歴史哲学講義』(岩波文庫)『精神現象学』(作品社)マルクス『経済学・哲学草稿』アラン『芸術の体系』(以上、光文社古典新訳文庫)など。
■講演内容について■(長谷川宏先生より)
 ヘーゲルは西洋近代を代表する哲学者の一人です。産業革命と市民革命が経済面および政治面において近代世界を大きく前進させるその渦中にあって、人間と社会と歴史の現にあるすがた、あるべきすがたを体系的にとらえようとするのがヘーゲルの哲学的課題でした。
 ヘーゲルの思想の特徴として「人間主義」「個人主義」「現実主義」「理性主義」「進歩主義」の五つを挙げることができるが、この五つはいずれも上昇期の西洋近代と深くかかわるものです。今回の講演においては、ヘーゲル思想を問うことが西洋近代を問うことに重なるような視点から話を進めたく思います。


平成28年度 冬季研究協議会(終了)

1 日 時:平成28年12月26日(月) 13:00〜17:00

2 場 所:首都大学東京 秋葉原サテライトキャンパス
        東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル12階1202室
       (地図はこちら
        交通:JR秋葉原駅 電気街口 徒歩1分 ほか
        *オフィスビルのため掲示物等貼りだせません。エレベーターで直接12階までお越しいただき、案内表示に従っておいで下さい。

3 内 容
(1)13:00〜15:00 読書会:ハンナ・アレント『人間の条件』(ちくま学芸文庫)
                    レポーター  千葉県立東葛飾高校 内久根直樹 先生
      レポーターからの案内文はこちら

(2)15:10〜17:00 実践交流会
           プリント持ち寄り・授業実践報告


平成28年度 第三回研究例会(終了)

1 日時:平成29年2月17日(金)午後2時〜午後5時30分

2 場所:東京都立府中東高等学校
            所在地:〒183-0012 東京都府中市押立町4−21
            交通 京王線「飛田給」または「武蔵野台」から徒歩15分(地図→こちら)

3 内容:
            14:00 受付開始
            14:25〜15:15 公開授業「他者と共生する自己を考察する授業〜ジェンダー構造による気づきから〜」(第2学年7組「倫理」)
                             東京都立府中東高等学校 塙 枝里子 先生
            15:15〜15:25 休憩
            15:25〜15:45 公開授業についての研究協議
            15:45〜17:15 講演「グローバル化とその痛みをめぐって−『再分配と承認』論を手掛かりに」
                             首都大学東京大学院人文科学研究科 教授 江原由美子 先生
            17:15〜17:30 諸連絡
            17:30 閉会

            ※当研究会は東京都教育委員会が認定した教育研究普及事業認定団体です。
            ※当研究会は個人会員制です。ご参加には年会費2000円を納入いただいております(当日受付)。
                  (ただし学生・院生は無料
            ※事前申し込みは不要です。
            ※お問い合わせは上記事務局までメールでお願いします。

■公開授業の概要■(塙枝里子先生より)
 日本では戦後,世界的な性別差別撤廃の中で男女共同参画社会をめざし,法整備がなされてきた。しかし,就職・賃金・昇進・待遇などさまざまな面で差別が存在するのが現状である。また,私たちは「差別はいけない」という規範を理解しつつも,無意識のうちに性差による固定観念から価値判断をすることもまた事実である。これについて,近代社会における隠されたジェンダー構造に気付かせ,「差別はいけない」という画一的な議論に終始せず,違いを理解したうえで,多様な他者と共生する自己の在り方生き方について考察する授業を提案する。その際,1・2学期で学習してきた先哲の思想や江原由美子先生がご講演される「再配分と承認」の理論にも触れ,思索を深めることを目指したい。
■講演講師プロフィール■
江原由美子(えはらゆみこ) 1952年横浜生まれ。現職、首都大学東京大学院人文科学研究科教授、1975年東京大学文学部卒業、1979年同大学院社会学研究科博士課程中退、博士(社会学)。東京都立大学助手・お茶の水女子大学助教授などを経て、2001年東京都立大学人文学部教授、2005年同改組により現職。2009年、公立大学法人首都大学東京理事、同大学副学長(2015年3月まで)。主な著書・著作、『ジェンダーの社会学入門』(共著、岩波書店、2008)、「ジェンダーフリーのゆくえ」(友枝・山田編『Do!ソシオロジー』、アロマ選書、有斐閣、2007、第7章)、『ジェンダーと社会理論』(共編著、有斐閣、2006)、『女性のデータブック』(共編著、有斐閣、2005)、『ジェンダー秩序』(勁草書房、2001)など
■講演内容について■(江原由美子先生より)
2016年は、1970年代末からイギリス・アメリカを震源地として強い政策トレンドになったネオリベラリズムと、社会主義社会崩壊によって加速したグローバル化の動きに、大きな転機が生じた年であった。6月のイギリスのEU離脱の是非を問う国民投票における離脱派の勝利、11月のアメリカ大統領選における保護主義と「アメリカ・ファースト」を主張するトランプ候補の勝利は、まさにネオリベラリズム政策を推進してきた両国において、拡大する格差拡大によって大きな犠牲を強いられた国内の労働者階級が、グローバル化を推し進めるエリート階級に強く反発したことによって引き起こされたと言われている。その意味では、この二つの出来事は、「反エリート主義」的な、つまりある意味民主的な色彩を帯びている。にもかかわらず、何れの主張においても、「難民受けいれ反対」「反移民感情」「排外主義」「性差別主義」等、「人権侵害」問題を引き起こしかねないような内容も含まれている。このような状況は、1930年代ドイツのナチズム台頭を思い出させるような陰鬱な光景である。なぜこのような主張が生じるのか、その背景にあるものは何なのか、ナンシー・フレイザーの、「再分配と承認」という理論枠組を手掛かりに、考えてみたい。